身近で売られている野菜には毒が含まれている種類があります。中には命にかかわるものもあり知らなかったでは済まされないような事態も…
とまぁ冒頭から少し怖い話となりましたが、取り急ぎ「スーパーなどで売られている市販の野菜に関して言えば全く問題なく安全ですよ」と誤解なきよう言わせていただきます。
これらはプロの目でしっかりと“品質管理された環境”で作られているため、出荷・販売の時点では有害となる成分を含んでいないからなのです。
…知らないと危険な事もある
ただし今回紹介する“毒を持つ野菜”というのは上記でもあるように、市販で購入し普通に食べている分には健康に悪影響を及ぼすようなことはないのです。
この「普通に食べる」とか「出荷の時点では」という表現の曖昧さがポイントですね。ではどんな野菜が毒を持ち、どうすれば危険なのかを紹介していきたいと思います。
ジャガイモ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★★★★ (非常に危険) | ソラニン、チャコニン (その他アクリルアミド) |
ジャガイモは元々南米原産のナス科の植物です。昔ヨーロッパに伝わった際にフランスの王宮では「花」として愛でられていたという話も有名ですね。
ジャガイモの毒はどこにあるの?
ジャガイモの毒は「芽」や「緑色の皮」の部分に多く含まれています。その成分はステロイドアルカロイドの一種「ソラニン」や「チャコニン」と呼ばれているものです。
どんな症状が起きるの?
ソラニンやチャコニンが含まれる部分を大量に食べると、嘔吐や腹痛、下痢などの消化器系症状や頭痛、眩暈などが表れ、重症化すると痙攣、意識障害などが起き場合によっては死亡することもあるとされる大変危険な毒素です。
注意する事
- 保管する場合は冷暗所に置き光の当たる場所に長期間置いてはいけない
- 芽が出ていたら周囲を多めに取り除く
- 緑色の皮になっている場合は周囲を取り除く、もしくは使用しない
- 家庭菜園で作ったあきらかに小さいジャガイモは使用しない
- 栽培時に土から芋が出ていたら土を掛ける
- 購入後早めに食べる
ジャガイモの毒については別の記事でも詳しく記載しています。<<ジャガイモには毒があるって本当?知らないと怖い身近な食べ物>>
銀杏(ギンナン)
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★★★☆ (危険) | 4′-メトキシピリドキシン |
ギンナンは中国原産のイチョウ科の落葉樹であるイチョウの種子になります。昔から「ギンナンを年の数以上は食べてはいけない」と言われており、その毒性を知られていました。
ギンナンの毒はどこにあるの?
食用とされる種子(仁)の部分に「4′-メトキシピリドキシン」と呼ばれる成分が含まれています。また果実の表面部には漆のかぶれ成分とよく似た物質が含まれており触れるとアレルギー性の皮膚炎が起きることもあります。
どんな症状が起きるの?
4′-メトキシピリドキシンはビタミンB6の作用の邪魔をしビタミンB6欠乏症になるとされています。銀杏を大量に摂取すると、嘔吐や下痢、重症化すると痙攣や意識障害などの症状を引き起こす可能性があります。
注意する事
- 一度に多くの量を食べない ※一度に40~50個レベルの摂取量(あくまで目安で個人差あり)
- 子供は少ない個数でも中毒症状が出ることがあるため注意する ※こちらも数十個レベルの摂取量(あくまで目安程度)
- 被れるため落ちているイチョウの果実には触らない事(もしくは手袋を着用のすること)
ワラビ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★★☆☆ (少し危険) | チアミナーゼ プタキロサイド |
ワラビは日本原産のコバノイシカグマ科の多年草です。古くから牛や馬のワラビ中毒はよく知られていた病気です。
ワラビのどこに毒があるの
ワラビにはチアミナーゼやプタキロサイドと呼ばれる成分が含まれています。牛や馬が間違えて食べ中毒症状を起こすことで知られていましたが、適切に処理しないままだと人が食べても量によってはワラビ中毒になることがあります。
どんな症状
家畜の場合、馬であれば痙攣や起立困難といった症状が起き、牛の場合全身の粘膜の出血症状を引き起こし死んでしまうといったちょっと恐ろしい症状が出ます。ヒトでも大量に食べることで神経痛などの症状が出る場合があり注意が必要です。
注意する事
- 生のまま食べない
- お湯の中で長時間あく抜きを行う
- ワラビ単体を過剰に食べ過ぎない
モロヘイヤ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★★☆☆ (少し危険) | ストロファチジン |
モロヘイヤは北アフリカ原産のシナノキ科の一年草で、主に若葉を食用としてます。モロヘイヤの種子や茎にはストロファチジンと呼ばれる有毒成分が多く含まれています。大量に摂取すると吐き気や嘔吐、眩暈などの中毒症状を起こします。
- 種子や茎などを食べない
- 家庭菜園で育てる場合は子供やペットが誤って食べないように注意する
フキ・フキノトウ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★☆☆☆ (要注意) | ピロリジジンアルカロイド類 フキノトキシン(ペタシテニン) |
フキには ピロリジジンアルカロイド類のフキノトキシン(ペタシテニン)と呼ばれる天然毒の成分が含まれています。 ピロリジジンアルカロイド類にはヒトや動物に対して肝毒性があると考えられており摂取すると肝障害の原因となる可能性があるそうです。ピロリジジンアルカロイド類 は水溶性のため水に溶ける性質を持っています。食べる際は必ず灰汁抜きをしましょう。
※日本ではフキは灰汁抜きをしてから食べるためこれまで健康被害は報告されていないとのことです。
インゲンマメ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★★☆☆☆ (要注意) | フィットヘマグルチニン |
インゲンマメにはレクチンの一種であるフィットヘマグルチニンと呼ばれる有毒成分を含んでいます。生のままや加熱不足の状態で大量に摂取すると数時間のうちに胃や腸の粘膜に炎症を引き起こし強烈な吐き気や嘔吐、下痢、強い腹痛などの消化器系の食中毒症状が表れます。重症化することは少なく、症状は数時間以内で回復していくとのことです。 食べる際は正しい調理方法で柔らかくなるまで十分に加熱しましょう。
ツクシ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | アルカロイド類 、チアミナーゼ、無機ケイ素等 |
ツクシには アルカロイド類の成分だけでなく、チアミナーゼ、無機ケイ素といった有毒成分が含まれています。保有量は微量ですが大量に食べ過ぎないほうがいいでしょう。また心臓疾患やニコチン過敏症などの場合は食べないほうがいいとされています。
ユウガオ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | ククルビタシン |
ユウガオなどのウリ科の植物(カボチャ、キュウリ、メロン、ズッキーニ等)にはステロイドの一種であるククルビタシンという苦みを生み出す特有の成分を含んでいます。大量に摂取すると数時間程度で嘔吐や下痢、腹痛などの消化器系の食中毒症状を引き起こします。ククルビタシンは強力な苦みの成分であるため、普段食べている以上の強い苦みや、舌に痺れなどの違和感があった場合は食べるのをやめてそのまま破棄するようにしましょう。
ナタマメ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (取り扱い注意) | ポニン、青酸配糖体、 有毒性アミノ酸のコンカナバリンAやカナバリンなど |
ナタマメにはサポニン、青酸配糖体、 有毒性アミノ酸のコンカナバリンAやカナバリンなどの有毒成分が含まれています。種類によっては毒性の強い品種があり大量に摂取すると吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などの中毒症状を引き起こします。個人で栽培する際は必ずどんな種類なのかを確認してから育てるようにしましょう。
ズッキーニ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | ククルビタシン |
ウリ科の植物(カボチャ、キュウリ、メロン等)にはステロイドの一種であるククルビタシンという苦みを生み出す成分を含んでいます。ククルビタシンを大量に摂取すると数時間で嘔吐や下痢、腹痛などの消化器系の食中毒症状を引き起こします。
市場に流通しているズッキーニは品種改良されているため毒性はほとんどありませんが、極稀に非常に毒の強い個体が出来ることがあるとのことです。ため食べる際に強烈な苦みを感じた場合は食べるのをやめておいた方がよさそうです。
筍(タケノコ)
毒の成分 | 毒の危険度 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | シュウ酸やホモゲンチジン酸など |
タケノコには苦みやえぐみの元であるシュウ酸やホモゲンチジン酸など自然毒である青酸化合物が含まれています。タケノコの灰汁抜きが不十分だと、舌が痺れるなどの症状が表れることがあります。そういった症状が現れた場合は直ぐに食べるのを中止しましょう。シュウ酸はカルシウムイオンと結びつく性質を持つため大量に摂取すると体内でのカルシウムの吸収を妨げたり結石の原因にもなるため食べ過ぎには注意しましょう。
ほうれん草
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | シュウ酸など |
ホウレンソウはヒユ科の植物でペルシャ地方が原産といわれています。
日本では全国で栽培されており今では1年を通して買うことができる野菜です。
ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれており、シュウ酸はカルシウムイオンと結合する性質があるため、大量に摂取することで体内のカルシウムの吸収を妨げたり、腎臓などにシュウ酸カルシウム結石が出来るなどの原因となりことがあります。
他の野菜などとバランスを考えながら偏り過ぎないように食べる量は適度にしましょう。
ゴーヤ
毒の危険度 | 毒の成分 |
★☆☆☆☆ (食べ過ぎ注意) | ククルビタシン |
ゴーヤにも他のウリ科の植物同様ゴーヤにもステロイドの一種であるククルビタシンという有毒成分を含んでいます。一度に大量に摂取することで嘔吐や下痢、腹痛などの消化器系の食中毒症状を引き起こします 。食べる際は適度な量でバランスよく野菜を取るようにしましょう。
トマト
毒の危険度 | 毒の成分 |
☆☆☆☆☆ (ほぼ無し) | トマチン |
トマトの果実には微量ですがトマチンと呼ばれるアルカロイド系の有毒成分を含んでいます。1日にかなりの相当量を摂取することで消化器系の不快感や悪心、眩暈などの中毒症状が現れる場合があるとのことです(1日4トン?という話もあるほどの途方もない量だそうです) 。しかし花や茎、葉には果実の数十倍~数百倍ものトマチンが含まれていることもありこれらの保有量は危険な量です。家庭などで栽培されている場合は間違って口にしないよう注意しましょう 。
キャベツ
毒の危険度 | 毒の成分 |
☆☆☆☆☆ (ほぼ無し) | ゴイトリン |
キャベツなどのアブラナ科の植物にはカラシ油配糖体と呼ばれる“辛味”の成分であるグルコシノレートを含み、これが加水分解されるとグルコースや イソチオシアネートといった物質が発生します。イソチオシアネート はゴイトリンと呼ばれる有害な成分を生成します。かなりの相当量を摂取し続けることで、甲状腺内でのホルモンの生成に必要なヨウ素の合成を阻害する働きをし甲状腺疾患である甲状腺腫をきたすことがあるとのこと。
アマチャ
毒の危険度 | 毒の成分 |
不明 | 不明 |
日本原産のアジサイ科の植物です。
アマチャにはフィロズルチンと呼ばれるショ糖の400倍以上といわれる甘味成分が含まれています。
日本では古くから飲まれている飲み物で、アマチャからは人体に対しての有毒成分は検出されていません。
しかし過去に児童がアマチャを飲み嘔吐などの中毒症状を起こした事例がありますが中毒症状に至った詳しい原因は分かっていません。
アマチャを飲む際はあまり濃くなり過ぎないよう薄めて飲むようにしましょう。