エノキタケによる食中毒
エノキタケは鍋の定番食材
10月に入り夜になると気温も下がって肌寒くなってきましたね。冬が近づくと暖かい鍋が美味しく感じます。
例えば、お鍋でよく使うキノコの具材は?と聞かれてエノキタケは外せないのではないと思います。値段も安くて調理も簡単ですし食卓の味方ですよね。
今回はそんなお鍋になくてはならない定番食材であるエノキタケに関しての注意事項をお伝えしていこうと思います。よろしくお願いします
エノキタケの食中毒事故
2020年3月に生のエノキタケを食べたことでによる集団食中毒事件がアメリカで起きました。
正直エノキタケを食べて食中毒が起きるというのはそれまでニュースなどで聞いたことがなかったためびっくりしてしまいました。
そもそもエノキタケに関わらずキノコは生で食べるというのは推奨されていませんよね。
日本ではキノコ類を生で食べるという食習慣がほとんど無いこともあってエノキが原因の食中毒はほとんど起きてはいません。
ネットでの反応も「エノキを生で食べる」というワードに関心が向いていました。食文化の違いが鮮明に表れた結果なんですね。
リステリア菌とは何か?
何処に潜んでいるの?
食中毒の原因であるリステリアとはどんな菌なのでしょうか?
普段あまり聞き慣れない名前ですが、この食中毒菌は決して特別な病原菌ではありません。
土壌や河川、動物の腸管内など自然界の至る所に生息しているごく一般的な細菌なのです。
また身近な食材ではナチュラルチーズなどの乳製品、生ハムやソーセージ、スモークサーモンといった(肉・魚介類の)加工食品など冷蔵庫など低温状態で長期保存ができる食品、サラダなどにもごく微量ですがリステリアは存在していることがあります。
注意事項を守れば怖くない
集団での食中毒事件が起きると非常に恐ろしい細菌というイメージになりがちですが、実際にそこまで過敏になるようなものではありません。
先に記述した通り加工食品を含め、普段の日常の中にリステリア菌は存在しています。しかし健康な人が多少摂取した程度では食中毒になることはありません。
厚生労働省のホームページによると、日本でのリステリアによる食中毒の報告例はこれまでに無く、リステリアに感染しても重症化することは稀であるとのことです。
妊婦や高齢者は注意が必要
ただし、健康な時は感染しても重症化しにくいのですが、妊婦や高齢者、抗がん剤治療中やHIV患者など免疫力が低下している場合は注意が必要です。
リステリアは重篤な症状になりにくいとは言え、重症化すると致死率が高い疾患でもあるため決して楽観視してはいけないのです。
感染予防のためにできる事
基本は、付けない・増やさない・やっつける
リステリア菌は低温でも増殖するため冷蔵庫など温度の低い状態で保存をしていても自然と増えてしまいます。冷やしているからといって絶対に大丈夫というわけではないため消費期限に関わらず早めに使い切るようにすることが大事です。
また加熱することで他の食中毒菌同様に死滅させることができるため食中毒予防のためにはしっかりと食材の中心部まで熱を通してから食べるようにすることが大切です。
◆ 一般的な予防対策
- 食材は加熱してから食べる。
- 冷凍庫で保管する
- 開封後は早めに消費する
- 消費期限内に食べきる
- 生野菜や果物は良く洗ってから食べる
食中毒予防のポイントを押さえる
食中毒を予防するポイントを押さえて普段の生活の中で実績していきましょう。
難しいことはないので少しづつ慣れていけばいいかと思います。以下厚生労働省ホームページより「家庭でできる食中予防の6つのポイント」なども参照しまとめました。
◆ ポイント➀ 食材の購入時
- 消費期限をチェックする
- 肉や魚などの生の食材は保冷剤などと一緒に入れる
- 購入した食材はできる限り早めに持ち帰る
- 生の食材同士が接触しないように個包装で分ける
◆ ポイント➁ 食材の保存方法
- 肉や魚は汁が漏れないようにしっかり包む
- 冷蔵庫の温度は10℃以下に保つ
- 冷凍庫の温度はマイナス15℃以下に保つ
- 冷蔵・冷凍庫内の温度が上がらないように扉の開け閉めは最小限に素早く行う
- 冷蔵・冷凍庫の温度を正常に保つために詰め込みすぎない。
◆ ポイント➂ 調理前の準備
- 調理前に手を洗う
- 生野菜や果物はしっかりと水道水で洗う
- 井戸水は水質に注意する
- ゴミはこまめに捨てるようにする
- ハエなど害虫が食材にたからないように注意する
- 加熱調理食材と生食食材は触れないように離す
- 調理器具は使用する前に熱湯消毒を行う
- タオルやフキンなどは使用済ではなく洗った清潔なモノを使用する
◆ ポイント④ 調理中、調理後の注意事項
- 食材は中心部までしっかりと加熱する(75℃以上の温度で1分以上が目安)
- 電子レンジを使用した調理は食材が均一に熱が通るように注意する
- 使用しない食材はすぐに冷蔵庫に戻すようにする
- 肉や魚の飛沫が他の食材や食器にかからないように注意する
- 包丁やまな板は生の食材用とその他で別々に用意する
- 調理器具の使用後は洗剤で良く洗い熱湯消毒、アルコール消毒を行い食器乾燥機でしっかりと乾かす
- 定期的に次亜塩素酸ナトリウムで調理器具やフキン、台所を消毒する(使い方は別途使用する薬品毎の用法を確認してください)
◆ ポイント⑤ 食事中
- 食事をする前に手を洗う
- 長時間常温で放置しない
- 作り置きは冷蔵庫で保管する
- 盛り付けは清潔な器具、食器を使用する
◆ ポイント 余った食材
- 保存用の食材の粗熱を取る際は素早く冷えるように小分けにする
- 長期間保存している食材は少しでも疑問を感じれば使うのをやめる
- 保存していた食材を温めなおすときは75℃以上でしっかりと加熱しなおす
- 手を洗い、綺麗な容器、器具で保存する
エノキタケに含まれる危険な成分
溶血作用のあるフラムトキシンとは
エノキタケには食中毒菌だけでなくフラムトキシンという強い溶血作用のある有害な成分が含まれています。
溶血とは血液中の赤血球の膜が破壊され血球内部にあるヘモグロビン溶液が血中に漏れ出てしまう事を言います。
どんな症状になるの?
主な症状は貧血や息切れ、腹痛や頭痛など、重症化してくると血栓症や腎不全、呼吸困難、ヘモグロビン尿などが起きます。
ヘモグロビン尿とは赤血球の破壊によって尿の中に大量のヘモグロビンが流出することで尿が真っ赤に染まるようになります。
対処方法とは
ここまで読むとエノキタケがとても危険で怖い食べ物に思えてきますが安心してください。基本的にこのフラムトキシンは熱に弱いので加熱することによって簡単に無毒化することができます。
ですので加熱さえしっかりとしていれば安全に食べることができます。
少量であればそれほど心配はいらない
少量であれば生で食べてしまったとしても健康に即影響が出るようなことはほとんどありません。新鮮であれば生で食べるレシピも沢山公開されていますしね。
どんな食材も過剰摂取体に毒になるという事ですね。何事もほどほどにしておきましょう。
📚エノキタケの雑学
本当はエノキタケは茶色い
エノキタケと聞くと真っ白でヒョロッとした細長い形のキノコをイメージしますが天然物になると全く変わってきます。
全体が茶色くナメコのようなヌメリが特徴で成長するとシイタケのように笠が大きく開き最終的には反り返るような形になります。
私たちがスーパーで目にするものとは大きくイメージが違いますね。実は売っているエノキタケが白色なのは栽培の段階で光を当てていないからなんです。もやしと同じ作り方ですね。
ただ最近の品種は光をあてても色が変わらない純白系統をつかっているそうです。
なぜわざわざ白くするんでしょうか?
茶色いままで売ってもいいと思いますよね?実際シイタケやエリンギ、シメジなど他のキノコは茶色い色ばかりです。
理由は非常にシンプルで市場原理により白くなったからだそうです。エノキも以前は茶色い色だったのが白い方がより売れるから生産者は白いエノキタケばかり作るようになったということなんですね。
ただ最近では茶色いエノキタケもちらほら見かけるようになってきていますが、まだまだエノキタケ=白が定番となりそうです。
エノキタケの出荷量トップは長野県
キノコの種類は6万種以上あると考えられています。その中で食用とされているものはわずか200種程度なのだとか。
その中でエノキタケの収穫量は長野県が最も多く年間8万トン以上あり2位の新潟県の2万トンの約4倍と圧倒的となっています。
さいごに
日本ではキノコを生で食べる習慣は殆どありませんが、鮮度に関係なくキノコ全般は食べる際には十分に加熱してから食べるようにした方がいいでしょう。
またキノコ類は食物繊維が多い為一度に沢山食べるとお腹を壊す恐れがあります。
体に良いとされる食材や薬も同じですが食べ過ぎや過剰摂取は逆に体にとっては毒となる物です。
何事もほどほどに、バランスのいい食生活を心がけましょう。