2日目のカレーが危険な理由を語る
日本人は年間約70回以上カレーを食べているという統計が出ているとのことです。週に一回以上食べている計算になりますね。特に2日目のカレーっておいしいですよね。
そんな食卓の定番のカレーにも危険は存在します。ウエルシュ菌という細菌をご存じでしょうか?あまり聞き慣れないと思われる方も多いと思います。今回はカレーやシチューに潜む危険な食中毒菌のお話です。
ウエルシュ菌とは
ウエルシュ菌は主に人や動物、または魚の体内(腸管)に存在しています。また土壌の中や河川、下水や海など自然界の中にも広く分布しているとても身近な細菌です。
そんなウエルシュ菌の特徴はというと、非常に熱に強く増殖の速度が速いという点です。熱耐性は細菌が※芽胞の状態であれば100℃のお湯の中で1~6時間の加熱に耐えられるほどで高温に強く、50度以下で増殖を始めます。この増殖の速度は10分程度で1回分裂を繰り返し3時間もあれば食中毒になる個体数(10万個程度)まで増えることが可能とのことです。
※芽胞とは細菌が厳しい環境の中では堅い殻のようなものを作り休眠することで高温や乾燥に耐えられるようになること
食中毒の症状
そんなウエルシュ菌の出す毒素は※エンテロトキシンと呼ばれるものです。この毒素は体内でウエルシュ菌が増殖し芽胞を作りだす際に生成する毒素です。 このエンテロトキシンの作用によって腸管にダメージを受け下痢を起こすと考えられています。
※毒成分のエンテロトキシン自体は熱に弱く60℃以上の加熱10分程度で不活性化できる
症状が出るまでの潜伏期間は6~18時間と感染から発症までが早いのが特徴で、主に下痢と腹痛がメインですが極まれに嘔吐や発熱もあります。ただウエルシュ菌によって起きる食中毒は軽傷で終わることがほとんどであり、通常であれば1日~2日程で回復します。
原因を知ろう
ウエルシュ菌による食中毒は年間数十件(20~40)と比較的少ない部類です。しかし過去の食中毒の事例では集団感染となるケースが多くみられます。これは菌の特徴である高温耐性や嫌気性で活性化することが少し関係しています。
食中毒菌は加熱することで死滅しますが当のウエルシュ菌は100℃の加熱でも生存可能であり唯一生き残ることができます。また数時間の短い時間で食中毒となる個体数まで増殖することが可能です。そして保菌している可能性の高い食材の動物肉や魚を使うことが多く、加熱することでカレーなどのスープ系や煮物などは料理内部の酸素が無くなりウエルシュ菌にとってはさらに繁殖する環境がさらに整っていきます。最後に大鍋でまとめて作り置きすることの多い料理では1~2日経過すると菌にとっては十分すぎるほど繁殖の時間ができます。
そして一旦発生すると再加熱した場合でも短時間の煮沸だと菌が死滅せずに生き残り、結果多くの感染者が同時に発生してしまう事になります。
こういった特性故に一晩寝かしたあとのカレーはウエルシュ菌の発生しやすい環境であるといえます。特に冷蔵庫に保存する場合には事前に本体の温度がある程度冷めるまで常温の環境で放置しておくと思います。その数時間の間に菌が繁殖していることもあり得るのです。
繁殖しない環境を作る
まず常温放置は非常に危険です。基本は食べきれる量だけを作り、作り置きしないようにすることが一番確実です。しかし料理によっては1~2日分になることもあると思います。そういった際に調理した料理は素早く冷却するようにしましょう。
ウエルシュ菌は50℃以下の温度で増殖を始めます。特に43℃~47℃で最も活性化するとされています。悠長に待っていては菌がどんどん増えることになりかねないので、素早く冷蔵庫に保管するためにも鍋ごと温度が冷めるのを待つのではなく小分けに分けることで料理の温度がより早く冷めるように時短を図りましょう。
冷蔵庫の場合10℃以下の環境で冷蔵保存をしましょう。ただし菌自体は冷蔵庫では微増し続けるため注意が必要です。そして再加熱する際は中の具材を撹拌しながら満遍なく全体に熱と酸素がいきわたるようにし、十分に加熱するようにしましょう。
最後に
ウエルシュ菌は食中毒の中では比較的症状の軽い菌です。しかし通常では死滅するほどの高温の環境でも生き延びるとても強い細菌です。気温の高い時期にカレーを作る場合ウエルシュ菌を意識して安全に食べられるようにしましょう。