日本原産の山菜として各地の山間部や河川周辺で見かけることができる春の野菜であるフキノトウですが、実は部位によってはヒトに対して有毒な成分が含まれているため、きちんとあく抜きをしないと食中毒になる危険性があることはあまり知られていません。

日本では季節の野菜として春になると食べられている身近な食材ですがこれからフキノトウを収穫に行こうと思っている方や購入してきた方は食材に含まれる毒性についての注意点をしっかりと確認しておきましょう。

フキとフキノトウの違い
一般的にフキとは地面から伸びている葉や茎のことを言います。対してフキノトウとは花蕾の部分をそう呼んでいます。少しややこしいのですがどちらも同じ植物で、部位ごとの名称で呼ばれているのですね。

フキに含まれている毒成分とは

根を食べてはいけない

フキにはピロリジジンアルカロイド類と呼ばれる種類の複数の天然毒成分が含まれています。主な成分はフキノトキシン、ネオペタシテニン、センキルキンと呼ばれるもので特に根の部位に高濃度で含まれています。
そのためフキやフキノトウを自分で採る場合は根の部位は土に残すようにして茎や葉・蕾の部位だけを収穫するようにしましょう。

肝障害を引き起こす恐れがある

ピロリジジンアルカロイド類はフキだけでなく被子植物の中でもキク科やムラサキ科、マメ科の一部の植物に特に多く含まれていることがあります。またこの毒成分の中には肝毒性が強いものがあり、大量に摂取することで肝障害の原因となる可能性あります。またヒトに対しては未知数ですが動物試験では発がん性があることも報告されているとのこと。

ピロリジジンアルカロイド類が含まれている食品
農林水産省のホームページでははちみつや緑茶にもピロリジジンアルカロイド類が含まれる可能性を示唆する記事が載っていました。ただしいずれも以下に記したように健康に影響する可能性は極めて低いとのこと。

はちみつ
キク科やムラサキ科などのピロリジジンアルカロイド類を含む植物から採取したはちみつには低濃度ながらピロリジジンアルカロイド類の成分が含まれているとのことです。ただし常識の範囲内での接種であれば健康被害の懸念は殆どないとのこと。

緑茶
ヨーロッパではグリーンティーと呼ばれるお茶からピロリジジンアルカロイド類が検出されるケースがあるそうです。ただし日本で流通している国産の緑茶を調べたところ全て定量限界未満でありピロリジジンアルカロイド類が含まれる可能性は低く健康への懸念は少ないとのことです。

フキによる健康被害は起きていない

ここまでフキやフキノトウの危険な側面を書き綴ってきていますが実は日本ではこれまでにこれらを食べたことによる健康被害は起きていないとのことです。
ただし!安心はしていられません、農林水産省のホームページによると海外ではピロリジジンアルカロイド類が含まれている植物由来の食品を食べたことによって健康被害が起きているのです。
この違いとして、日本ではフキやフキノトウを食べる際にはお湯でしっかりとアク抜きをしてから食べる食文化であることや、旬の時期が短く限られた期間でしか食べられない、そもそも一度に沢山食べるようなものではないなどが関係しているとのことです。

予防のためにできる事

フキやフキノトウに含まれているピロリジジンアルカロイド類は水に溶けやすい性質であるため沸騰したお湯の中でアク抜きを行い、冷水にて数時間から数日間程度晒し保存することで大部分の有毒成分を食材から減らすことができます。ただしアク抜きに使ったゆで汁や保存胃に使った冷水の中には毒成分が残っているため調理への再使用してはしてはいけません。

また近年、食材の栄養素を重視しアク抜きせずにフキノトウを食べる調理法もネットでは見られますが、思わぬ健康被害が起きることも考えられるため、フキやフキノトウを食べる際はしっかりと正規の手順を守りアク抜きをしてから美味しくいただきましょう。
またアク抜きをしても極微量に含まれている可能性があるため乳幼児や妊婦は食べるのを控える方が良いとされています。

いつきいつき

ゆで汁は食材の旨味が出ていて使えるかもと思ってはいけません、要注意です。

フキノトウによる花粉アレルギーに要注意

雄花(おばな)と雌花(めばな)に要注意

フキノトウには、雄花と雌花の2種類があることをご存知でしょうか?普段テンプラやフキ味噌などで食べていると気が付きにくいのですが、実はこの違いで重要な症状になる場合があるのです。

フキノトウ(フキ)は雌雄異株(しゆういしゅ)と呼ばれる雄花か雌花のどちらかの花しか付かない“キク科の植物では珍しい存在”です。
多くの動物のようにオスとメス、雄の植物と雌の植物とに分かれているという事ですね。雄花のフキノトウ花粉を持っているため花粉に対するアレルギーがある場合、雄花のフキノトウを食べるとアレルギー症状が出る可能性があるのです。
フキノトウを食べた直後や数時間後に、喉や舌ピリピリとした痛みや、目の痒み・涙目、皮膚の痒みや発疹・蕁麻疹、腹痛や下痢、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状がみられた場合はフキノトウを食べない、また軽度であってもすぐに医療機関に行くようにしましょう。

<<食物アレルギーに関してはこちらの記事でも詳しく書いています。
ウニを食べると喉がピリピリする、それはウニアレルギーではないでしょうか?>>

雄花と雌花の見分け方

雄花と雌花はぱっと見の外見はほとんど同じですがよぉーく観察してみると違いが分かります。
花粉のある雄花は黄色い花が付いていてブロッコリーのようにまとまっています。対して花粉の無い雌花は白っぽい花をつけています。
フキノトウを摘む際に目安として一番わかりやすい部分ですね。
花粉アレルギーが心配な場合このように雄花雌花を区別しておくのも一つの手です。
※ただし雄花、雌花は近接して生えている場合もあり必ずしも相手の花粉が付いていないとは限りません。アレルギー症状は時にアナフィラキシーなど重症化するリスクもあるため注意しましょう。

フキノトウ雄花雄花(花粉あり) フキノトウ雌花雌花(花粉なし)

フキノトウにそっくりな有毒植物に要注意

そっくりさんハシリドコロ

フキノトウには芽吹き始めの姿形がよく似た「ハシリドコロ」と呼ばれる有毒植物があります。毎年このハシリドコロをフキノトウと勘違いして食べてしまい食中毒になる事例が相次いでいます。
厚生労働省ホームページの「自然毒のリスクプロファイル」でもハシリドコロによる食中毒に関する注意喚起がされています。

どんな植物?

ハシリドコロはナス科の多年草で、日本では本州から四国、九州など広い範囲で見かけることができる植物です。全体にアルカロイド系の有毒成分を含んでいるため食べることはできません。別名「キチガイイモ」や「キチガイナスビ」など物騒な呼び名が付いているため、その危険さがうかがい知れますね。
またフキノトウと同じ3月~4月にかけて芽吹き始めるため間違えてし採取し誤食してしまうケースが相次いでいるとのこと。

非常に恐ろしい毒成分

ハシリドコロの毒はアルカロイド系の毒で全体に有毒成分が含まれていますが、特に根と茎に多く含まれています。
間違えて食べてしまうと数時間で嘔吐や痙攣、昏睡などの中毒症が表れます。またこの毒成分は加熱などによっては分解されないという点も注意すべきでしょう。くれぐれも間違えて食べることのないようにしたいですね。

ハシリドコロ出典:厚生労働省HP

フキノトウ雑学

雄花の方が若干苦い

フキノトウは雌雄異株であり雄花、雌花の2種類があると前述しました。では実際に食べた場合に違いはあるのでしょうか?個人の好みにもよりますが雄花の方が少し苦みが強いとのこと。
一度食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね?

蕾の状態が一番美味しい

フキノトウは花が咲くほどに苦みが増すとされています。苦いのが好みという理由以外であればできるだけ花が開く前の蕾の状態のフキノトウを採取するのがおすすめです。ただし蕾の状態は有毒植物のハシリドコロにそっくりなので注意しましょうね。

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