ボツリヌス菌とは
ボツリヌス菌は土壌の中など自然環境中によくみられる菌であり、酸素が少ない環境の下で増殖・活性化する嫌気性の細菌です。また熱に対して非常に強く100℃の高温で長時間加熱しても死滅させることができないほどです。
ボツリヌス菌は毒素型の食中毒菌で菌が作り出した毒素を取り込むことで中毒症状を引き起こします。この菌の作り出すボツリヌストキシンは自然界の中の毒素では最も強い致死性をもつ毒の一つでもあります。
<<毒素型と感染型の違い>>
感染型は食品内に存在する細菌が一定以上に増殖しそれらを摂取することで体内で感染することで発症するタイプです。毒素型は食品内の細菌が生成した毒素を食品と一緒に摂取することで起きる中毒症状です。
<<ボツリヌストキシン>>
致死量(LD50) / 0.000000015~ (mg/kg) という極めて毒性が強い。自然界の中でも最も強い致死性を持つ毒成分の一つである。
ボツリヌス菌の食中毒症状
<<ボツリヌス食中毒>>
ボツリヌス菌の毒素を含む食品を摂取することで起きるボツリヌス食中毒では、数時間~36時間程度の潜伏期間ののち発症します。主な症状は吐き気、嘔吐、視力障碍、言語障害、筋力低下など重症化すると死亡することもあり大変危険な病気です。
<<>乳児ボツリヌス症>
また1歳未満の乳児に見られる乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌の芽胞が体内に入り腸内で菌が毒素を生み出すことで発症する乳児に見られる病気です。潜伏期間は3日~30日ほどと幅が広く、初期のころは便秘の症状がみられます。重症化すると死亡する可能性もあるため、原因食品の一つとして考えられているはちみつは乳児には与えないように指導されています。
※ボツリヌス菌による感染の症状として他にも、創傷ボツリヌス症や成人腸管定着ボツリヌス症、吸入ボツリヌス症などがあります。
感染原因
ボツリヌス菌は通常酸素が無い状態の食品で増殖します。したがって真空パック処理をしている加工食品などが原因となる場合が多いとされています。缶詰、瓶詰、真空パック食品、レトルト食品、はちみつなどがそれにあたります。
特に容器包装詰め、瓶詰、自家製の缶詰などで加熱処理がされていないタイプのものが食中毒の原因食品となることがあります。通常市販されている大部分の缶詰やレトルトパウチ食品の場合120℃の高温で4分間以上の加熱処理によって殺菌されていますが、似たような形状でもそれら殺菌処理がされていない場合では食品内で菌が増殖し毒素が生成される可能性があります。見分け方としてはボツリヌス菌が食品内で増殖すると容器が膨張したり、異臭がするなどの変化が起きます。
※人から人への感染はない
感染の予防方法
常温保存可能なレトルトパウチ食品によく似た包装形態の食品でも加熱処理されていない場合要冷蔵の注意が記載されています。そういった食品の場合は必ず保存方法を確認し期限に関わらず早めに消費するようにしましょう。そしてボツリヌス菌は120℃で4分間以上加熱しなければ死滅しないため家庭で長期保存の食品を作る場合などは特に注意が必要です。
- 真空パックや缶詰などの製品の容器が膨張している物は食べない
- 開けた際に異臭がする場合は食べない
- 包装容器や缶詰のタイプの製品で加熱処理されている製品かどうか表記をよく確認する
- ボツリヌス菌は120℃で4分以上加熱しないと死滅しない
- ボツリヌス菌の毒素は80℃で30分以上の加熱で分解する
- 保存する場合は3度以下もしくは、冷凍庫で保管する
- 1歳未満の乳児にはハチミツを与えない
※ハチミツの中でボツリヌス菌は増殖することはないが乳児の腸内で菌の芽胞が発芽しボツリヌス菌が増殖する。ちなみに成人の腸管では増殖はしないとされている。