基本情報
一般名 ゲルセミウム・エレガンス
別名 胡蔓草(こまんそう)
胡蔓藤
野葛(やかつ)
毒根(どくね)
断腸草
和名 治葛(やかつ)
英名 Chinese Gelsemium(チャイニーズ・ゲルセミウム)
学名 Gelsemium elegans
分類 リンドウ目,ゲルセミウム科,ゲルセミウム属
形態 常緑低木
大きさ 高さ:6~12m
花期 時期:5~11月
季節:初夏~秋
原産国 インド,中国南部,東南アジアなど。
分布地 日本には自生していない。
生育環境
入手難度 ★★★★(入手不可)
入手方法 取り扱っている店舗や業者もないため本種が生えている地域に生き直接採取するしかない。
購入価格
花言葉
誕生花
毒性
危険度 ★★★★★★(猛毒)
有毒成分 ゲルセミン
コウミン
ゲルセミシン
有毒部位 根、茎、葉、花など全草に毒が含まれている。
中毒症状 眩暈、悪心、嘔吐、など重度の場合呼吸麻痺によって死に至る。
致死量 0.05㎎/㎏
食用部位 食用不可
誤食部位
備考

ゲルセミウム・エレガンスの毒

ゲルセミウム・エレガンスの保有する毒の成分は主にゲルセミン、ゲルセミシンなどのアルカロイドです。主な中毒症状は眩暈、瞳孔拡大、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、軽度であれば呼吸困難程度で済みますが重度の場合呼吸停止によって死に至ります。またこの毒は呼吸中枢に直接作用するため呼吸停止後も心臓は動いているという話すらあるほど。
中毒症状の発症は接種方法の違いなどによって時間差があり、根の煎汁や新鮮な幼芽を摂取すると他の部位よりも症状の発症が速くなる。

中国では薬として使われていた

中国やタイの一部では治葛(やかつ)や胡曼草(こまんそう)、鉤吻(こうふん)と呼びガンのような強烈な痛みの時や性病の薬として使われていました。ただ毒性があまりにも強いため近年では薬草の市場でもほとんど見かけなくなったということです。

古くから日本に伝わっていた

中国は唐から日本に伝わっており、奈良時代にはすでに治葛の名で渡来しています。また奈良の正倉院には治葛とその納めるための容器が当時から秘蔵されていることが1998年の調査で解明されています。
治葛の名称は正倉院に奉納されていた生薬60種が記載されている『種々薬帳』の一番最後、60番目に記載されています。しかし当時保管されていた量は約8㎏程でしたが現存する残量は約390gとなっており、当時奉納された治葛のほとんどが無くなっているのです。ゲルセミウムエレガンスのような危険な毒草が一体どんな目的で、どのように使われたのかはわかっていないとのこと…気になりますね。

同属植物は有名なアノ花

ゲルセミウムエレガンスは非常に毒性の強い植物で、日本ではまず見かけることも購入することもできない希少な植物です。しかし同属に『カロライナジャスミン』という有名な園芸植物があります。町の園芸店や一般家庭の花壇などで普通に見かけることが出来る花です。ゲルセミウムエレガンス程強力ではないにしろカロライナジャスミンにも同様の有毒成分が含まれており、大変危険ですので絶対に口に入れないようにしましょう。
切り花など剪定時には直接肌や目に触れないように手袋やゴーグルなどで保護しておくと安心です。ただ普通に栽培するだけであれば過剰に考える必要がないため毒性があるという事だけ気を付けておけばいいと思います。


カロライナジャスミンという名称からジャスミン茶として飲めると勘違いし中毒となる事故が起きています。しかし『モクセイ科のマツリカの花』でありカロライナジャスミンではありません。このことは厚生労働省“自然毒のリスクプロファイル”でも注意喚起されているため確認することが出来ます。
植物の中には普段食用にしているモノと似た名称がつけられている場合が数多く見受けられますが、基本的に観賞用として育てているものは花の蜜も含めて口にしないようにしましょう。

ゲルセミウム属は3種類

ゲルセミウムと呼ばれる植物は3種類あり①エレガンス、②センピルヴィレンス、③ランキニがそれぞれ存在しています。エレガンスは中国南部や東アジアにかけて分布しており、センピルヴィレンスとランキニは北アメリカに分布しています。

シュア・ノーツアの意味

タイの少数民族の間では「シュアノーツア」と呼ばれていて、これは食べると死ぬという意味で使われています。

参考文献

  • 奥井 真司.「ゲルセミウム・エレガンス」.『毒草大百科 愛蔵版』.株式会社データハウス、2003