種の中のアミグダリンという成分が危険

桃の種の中には桃仁(とうにん:種子や仁のこと)と呼ばれるアーモンドの様な見た目の柔らかい種子が入っています。

この種子には抗菌、抗炎症、抗凝血、鎮痛作用などがあるため中国では漢方薬として昔から下腹部の満痛や月経不順など主に女性の病気に使われてきました。

◆桃の葉は民間で腹痛や下痢に多く要いられていたが専門家の処方が無ければ使うのは推奨されない。

桃の種を食べすぎた女の子のイラスト
出典:絵/イラストメメ

しかし生の桃の種子にはアミグダリン(シアン発生性配糖体の一種:シアン配糖体)と呼ばれる成分が含まれており、人の腸内で種子が腸内細菌などの出す酵素によって消化・分解されるとシアン化合物(シアン化水素)を発生させるのです。

このシアン化合物はヒトに対して強い毒性をもっていて多量に吸収すると吐き気や発熱、頭痛、めまい、血圧低下などの中毒症状を引き起こし、重度の場合意識障害、呼吸困難、心臓麻痺などによって死亡することもある危険な物質なのです。

中毒になるには100個の種子を食べる必要がある?

シアン化水素は青酸ガスとも呼ばれ、毒物で有名な青酸カリもシアン化合物の一種です。腸内で発生した青酸ガスが体内に吸収されることで細胞の呼吸を阻害する作用が起き、脳や心臓に重篤な障害など命に関わる症状が表れるのです。

このような危険なガスが発生する成分が含まれている桃の種ですが、中毒症状が起きるとされる量は、おおよそ100個以上の種子を一度に食べる必要があると言われています。

致死量のアミグダリンを摂取しようとすれば途方もない桃(の種)が必要になるため、実際のところ頭痛や眩暈といった軽度な症状で済む場合が多いのです。このことから重症化するといったケースはほとんどないのですが子供や幼児はより少ない量でも重篤になる可能性が指摘されているため誤って食べてしまわないように注意しておきましょう

桃以外にもバラ科の果実は毒持ちが多い

アミグダリンを含む果実は何も桃だけとは限りません。同じバラ科のアンズ、ビワ、アーモンド、ウメ、スモモ、リンゴなどの種子にもアミグダリンは微量ですが含まれているのです。

中でもビワの種子に含まれるアミグダリンの量は多く、平成29年にビワの種子を粉末にした食品から高濃度でシアン化水素が検出され、それらの製品が回収されるといった事例が起きています。

ビワの種子を使った製品が作られた背景には、ビワの種子を食べると健康に良いといった根拠のない噂が広まった弊害と言えるでしょう。シアン化合物を含む食品は健康被害の危険性があるためどのような場合でも安易に手を出さないようにするべきです。

アミグダリンとは

未熟な果実に多く含まれている

アミグダリンは木に実ったばかりの『種が柔らかく未成熟な果実の状態の時が最も保有量が多い』とされています。これは種子が柔らかい時期に鳥や昆虫に食べられるのを防ぐための防御反応だと言われています。

加工すると分解される

アミグダリンを含む果実、例えばウメであれば梅干しや梅酒などに加工するとアルコールや塩によってアミグダリンが分解されて減少することが知られています。

アミグダリンはビタミンではない

過去アミグダリンはビタミン17と呼ばれていたが時期がありましたが、現在では体にとって必須栄養素ではなく、また欠乏症もみられないためビタミンの定義ではないということで否定されています。

アミグダリンはガンに効く科学的根拠がない

1970年代ごろアミグダリンはガンの治療に使われていました。しかしレートリルがガンに有効であるという症例報告や科学的根拠は今のところ認められてはいません。