生の鶏肉による食中毒

梅雨が明けて気温が上がってくると注意しなければいけないのが食中毒です。特に近年増えているのが鶏肉を生や生に近い状態で食べたことによる食中毒事故。ニュースでも頻繁に取り上げられているため一度は目にしたことがあると思います。
なぜ鶏肉による食中毒が起きるのでしょうか?今回は鶏肉の生食による危険性について紹介します。

ーー居酒屋で提供されていても

鶏肉にはカンピロバクターという食中毒を引き起こす菌がいて、生の状態で食べることで発症します。近年国内における食中毒の大半をこの菌が占めて久しいのですが、その件数に反して危険性における認知度は低いままというのが現状です。

理由として牛肉や豚肉は規制されているため、生で食べる機会が少ないというのがあります。これは過去に大きな食中毒事故を起こしたことがあり生で食べることが危険であると社会的な関心が高まることで都度リスクに応じた制度が設けられてきたという経緯があります。

そういう意味では鶏肉が原因となった食中毒件数は上位でありながらいまだに明確な法規制などが設けられていないのは関心を引くような事故が起きていない、たまたまなだけなのかもしれません。

厚生労働省でも明確に提言していませんが鶏肉の生食に関しては注意喚起を行っており、その危険性について説明しています。現状では飲食店などで生で提供しているところもありますがあくまでも「規制されていない」ため提供できるのであって、生で食べても安全だからという理由ではないということです。

鹿児島県など鳥肉の生食文化がある地域などでは県独自の衛生基準を設け非常に厳しい条件のもと一部鶏肉の生食を推奨しているところもあります。しかしそんな基準に合格した生食用の鶏肉であっても抵抗力の弱い子供や高齢者などは十分注意するようにとされているのです。

ーー新鮮だから安全

よく耳にするフレーズではないでしょうか?肉にしろ野菜にしろ食べ物は鮮度が大事といういうのは当たり前のことですが、ことカンピロバクター菌に関しては新鮮だから安全という図式は成り立ちません。

基本的に健康な鶏であっても体の中にカンピロバクター菌を保有していて、高い確率で加工後の鶏肉にも付着しています。カンピロバクターは鶏肉の中では増殖せず、少ない菌であっても人が食べると食中毒を引き起こすことが知られているため鮮度の良し悪しは関係ないのです。

冷蔵庫で保管してはどうでしょうか?これも効果はありません。少ない菌数で食中毒になる事には変わりなく、初めから肉に菌が付着していた場合は低温保管をしても何の意味もなさないのです。

安全に食べるのは肉の中心部までしっかりと加熱し火を通すこと、もしくは生食用として加工されたものを食べることです。ただし生食用の場合、子供や高齢者など抵抗力が弱い方は食べないほうが良いとされています。

ーー恐ろしいギランバレー症候群

カンピロバクター菌に感染すると2~3日程度で下痢や腹痛、発熱、吐き気や嘔吐など他の感染型細菌性食中毒と酷似した病状が現れます。そのほとんどは1週間程度で治癒しますが中には重症化したり死亡したりする事例も稀にあるそうです。

特に抵抗力の弱い子供や高齢者は重症化しやすい傾向にあるため注意が必要になってきます。またカンピロバクター菌に感染後、手足の麻痺や顔面神経の麻痺、呼吸困難度などを引き起こす「ギランバレー症候群」と呼ばれる病気を発症することもあります。

このギランバレー症候群という病気は体に力が入らなくなり、感覚がわかりにくい、しびれるなどの病状を引き起こす病気で重症例では自律神経障害などにより命に係わることもある非常に危険な病気なのです。

ーー安全に食べるためには

鶏肉は基本的に「十分に加熱調理」されたものを食べることとし、例外はないと考えましょう。カンピロバクター菌は肉の内部にも存在しているため周りを炙っただけのタタキの状態のものでも安全とは言えません。もちろん鮮度も関係なく専門家からは「鮮度が良いほうが危険」とさえ言われるほどです。

自宅で鶏肉を調理する際に気を付けるポイントは生肉に触れた器具と他の食材を調理する器具は必ず分けるようにすることが大切です。直接生肉を食べなくても間接的にカンピロバクター菌に汚染された食品を取り込むことで食中毒になることは十分に考えられるからです。

また調理後は生肉に触れた器具や手は洗剤で細部までしっかりと洗い水道水で流すようにすることです。このとき水しぶきが他の場所に飛び散らないようにすることも大事です。