ソーシャルディスタンスやキャンプブームによって自然に触れ合う機会が増えたと良く聞きます。
ただ川や湖などの自然の淡水にはヒトに感染する寄生虫がいることはほとんど知られていません。
今回はかつて日本のとある地域で流行った奇病の一つを紹介します。

基本情報
一般名 日本住血吸虫(にほんじゅうけつきゅうちゅう)
学名 Schistosoma japonicum(シィストウソーマ・ジャポニカム)
危険度 ★★★★★
罹患数  約2億人以上
年間死亡者数 1~2万人
疾病名 日本住血吸虫症(にほんじゅうけつきゅうちゅうしょう)
症状 倦怠感、食欲不振、発熱、下痢、粘血便、血尿、肝硬変、腹水、脳の炎症など最悪死亡する。
感染経路 人が川、湖、沼、田んぼなどの淡水に入ることで水中を経由し皮膚から侵入感染する。
治療方法 プラジカンテルの投与
中間宿主 ミヤイリガイ
分布地 中国、台湾、日本、フィリピン、インドネシアなど
大きさ 成虫:体長12~20㎜

世界の三大寄生虫病のひとつ

日本住血吸虫症はマラリアやフィラリアと並んで世界の三大寄生虫病のひとつとされていて、日本では山梨県の甲府盆地、広島県片山地方、福岡県筑後川下流域の風土病として古くから知られています。ただし国内に限っては戦後の徹底的な撲滅対策によって1976年を最後に以降感染者は確認されていません。
しかし世界に目を向ければ今なお2億人以上の患者と、それによる合併症等によって年間数万~数十万人の死亡者がいるといわれています。

この寄生虫はヒト以外にもイヌやネコ、ネズミなどにも感染する人獣共通感染症であり成虫は宿主の静脈内に寄生して血管の中で産卵します。感染した動物の糞に混じって放出された虫の卵(セルカリア)が水中を漂いながらヒトの皮膚を貫いて侵入するといったサイクルを繰り返しています。
アフリカでは住血吸虫の危険性は一般に周知されていますが、知らない旅行者がマラウイ湖に入り感染者が続出したという報告もあります。

どんな症状?

初期段階は皮膚から侵入した際にその部位にかゆみを伴う皮膚炎を生じさせます。侵入した寄生虫は血液やリンパ液系に乗って体内を移動し数週間で成虫に成長、産卵を始める頃になると下痢や腹痛、粘血便など消化器系の症状がみられる他、発熱や倦怠感、食欲不振、肝腫大など全身症状も起きることがあります。

その後症状が進行すると成虫の産んだ大量の卵が体をめぐり肝硬変や腹水など臓器に病変を引き起こし最悪死亡することもあるのです。また肝臓癌や直腸癌の発生が高くなるとも考えられていますが明確な因果関係はわかっていません。

海外では気を付けよう

注意すべきは日本ではなく感染者が多くみられる海外の流行地域の淡水です。海や塩素処理されたプールなどでは感染することはありません。しかし自然の川や湖では依然感染リスクが高いと考えられるため水に入るときはゴム長靴やゴム手袋を着用し皮膚に直接水が触れないようにするべきでしょう。