時折見かける「海岸に打ち上げられたイワシの大群」の記事。温暖化の影響がーとか大地震の前触れだーとか昔から散々言われていますが、イチ庶民からしたら気になるのはもったいないなー、ってことだと思うんですよね。たまに持って帰って食べるなんて言っている人もいますが職業柄色々と心配になります。今回はそんなイワシに関係する寄生虫を紹介していきます。

アニサキスについて

アニサキス
写真提供:厚生労働省

アニサキスはクジラやイルカなどの海洋性哺乳類を終宿主(体内で産卵するために必要な生き物)とする線虫で、多くの海の魚に卵や幼虫の姿で内臓や筋肉の中に寄生していることでも知られています。

ヒトへはカツオやサンマ、サバ、イワシの寿司や刺身など生の状態のまま食べることで感染することがあり、体内に入ったアニサキスの幼虫は胃や腸の壁に頭をめり込ませるため、非常に激しい胃痛が起こります。

日本では世界的に見ても感染例が多く確認されていて、最も認知されている寄生虫といえます。昔からアニサキス自体は知られていましたが2010年代中ごろからメディアでアニサキスの食中毒が報じられたことでより世間の関心を引きようになったのです。

ーー原因である食材

アニサキスの感染源となる生物は有に100種類を超えていて、普段私たちが食べている魚介類のほとんどにが寄生している可能性があります。日本では令和元年以降でも毎年300件以上が報告されていて、最も多いとされているのがサバやカツオで主な事例としてしめ鯖、カツオのたたきなどが挙げられています。イワシは近年消費量(漁獲量)の拡大からアニサキスの症例が増えてきた魚の一つです。

<アニサキスの寄生する魚を詳しく見てみる>

ーー症状と予防方法

アニサキスの幼虫に感染すると、食後数時間~十数時間程で激しい胃痛や嘔吐を伴う症状が現れます。これはアニサキスの幼虫が胃の粘膜の中に侵入しようとして胃に穴をあけているため引き起こされる病状で胃アニサキス症と言われています。

また胃アニサキス症よりも遅く、数十時間~数日後に現れる症状として下腹部の痛みや嘔吐、悪心、腹部膨満感などが起きることがあります。これはアニサキスの幼虫が腸にまで到達し腸壁に侵入しようとする際に起きる病状で腸アニサキス症と呼ばれています。

いずれの場合も激しい痛みが特徴で生魚を食べた後起きた食虫毒でアニサキスが原因と考えられる場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。※胃アニサキス症よりも腸アニサキス症の方が摘出が困難とされています。

アニサキスに感染しないためにはやはり生で魚を食べないことが最も確実な方法です。幼虫は熱に弱いため中心温度が60度以上1分以上の加熱で死滅し、冷凍であれば‐20度の状態で24時間以上冷凍処理をすることで死滅します。

ーー食中毒事例

2019年3月
群馬県のスーパーで購入したイワシの刺身を食べた後腹痛や吐き気などを訴え医療機関を受診したところアニサキスが原因と断定された。(60代・女性)

2021年5月
千葉県のスーパーで購入したイワシの刺身を食べ胃痛や嘔吐などの症状を訴えて医療機関を受診。イワシについていたアニサキスが食中毒を引き起こした原因と断定された。(10代・男性)

2022年5月
鳥取県のスーパーで購入したイワシとトビウオの刺身を食べ胃痛や吐き気の症状を訴えた。その後医療機関でアニサキスと断定された。(50代・男性)

2022年6月
福井県の寿司店で寿司や刺身を食べ腹痛などを訴え医療機関を受診したところ、胃からアニサキスが見つかり経過観測のため入院した。(50代・女性)

ーーおわりに

イワシは価格も手頃でお寿司やお刺身としても美味しいのですが、いくら対策を徹底しても絶対に安全な状態で提供するというのはそう簡単な話ではないと思います。生で食べる以上食中毒リスクは避けて通れないのかもしれませんね。