ソーシャルディスタンスが叫ばれて久しい昨今、人と人との距離が保てるキャンプがちょっとしたブームになっているのはご周知の通りかと思います。そしてキャンプの醍醐味といえば川釣り(勝手に筆者が思い込んでいるだけかもしれませんが…)!自分で釣った魚をその場で調理して食べるのは本当においしいですよね。

ただし川魚を食べる際に気を付けるべきことがあります。それは寄生虫の存在です。特に初夏から夏にかけて旬を迎える川魚の王様である『鮎(アユ)』!あまりにも有名であるがゆえに寄生虫の危険性があることを知られていないように感じます。
今回はそんな日本を代表する淡水魚の『鮎に関係する寄生虫』を紹介します。

どんな寄生虫がいるの?

横川吸虫の虫卵 出典:東京都福祉保健局ホームページ

日本の多くの河川には『横川吸虫』と呼ばれる寄生虫が住み着いていて、全国各地の『鮎の産地に一致して分布している』ため天然物の鮎には高確率で横川吸虫が寄生しています。

この横川吸虫と呼ばれる寄生虫は体長が1㎜程度と非常に小さく、鮎にはさらに小さな虫卵の状態で寄生していることも多いためアニサキスのように調理中にヒトの目で取り除くことは実質不可能なのです。

そして余り知られていませんが横川吸虫はアニサキスに次いで2番目に感染者数が多い寄生虫としてもひそかに有名なのです。

感染するとどんな症状が出るの?

人が横川吸虫に感染すると腹痛や下痢などの消化器系の症状が出ます。特に子供では症状が強く食欲異常や頭痛、粘血便といったことがみられるため子供が食べる際は注意が必要です。

ただ横川吸虫に感染した数が少ない場合は無自覚、無症状で経過し、寄生虫自体の寿命が1年程度と短いこともあり、自然治癒することも多いとされています。

予防するにはどうすればいいの?

横川吸虫は熱に弱いため食べる時は魚の中心部までしっかりと火を通し生や生焼けでは食べないようにすることが大事です。
また包丁やまな板等鮎の調理に使った調理器具にも寄生虫や虫の卵が付着していることが考えられるため使用後はしっかりと洗浄し他の食材との使い回しはしないように取り扱いに注意しましょう。
アユ釣りをした際に素手でつかむと寄生虫が手に付着しそこから二次感染をすることもあるため手で触った後は必ず石鹸で洗い水道水でしっかりと洗い流しましょうね。

養殖物の鮎は天然物と違い地下水を利用しコンクリートで整備され衛生管理の行き届いた場所で育てられていることから寄生虫の危険度は低いのですが子供や高齢者などは感染後重症化しやすいことから生食は避けできるだけ火を通してから食べるようにしましょう。

危険な食べ方をしないことが重要

鮎を生で食べる習慣がある地域では感染者が多発しているというデータもあります。『鮎の背ごし』や『シラウオの踊り食い』などは横川吸虫に感染するリスクが高いためそのような食べ方は避けましょう。

<<参考文献 一部>>

  • 上村清,井関基弘,木村栄作,福本宗嗣.寄生虫学テキスト(第3版).株式会社文光堂,2008
  • 堤寛.感染症大全.株式会社飛鳥新社,2020
  • 東京都福祉保健局、「横川吸虫」、(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/musi/06.html)