令和になってアニサキスによる食中毒ニュースが増えているように感じます。
元々寄生虫の食中毒といえば、2016年に大きく話題になった芸能人のアニサキス騒動の記憶が久しい方もいらっしゃるのではないかと思います。思えばあの時期から世間の関心が高くなったのかもしれませんね。ということで今回は過去執筆した記事で反響の大きかったシラスの寄生虫について少し趣向を変えアニサキスとシラスのことを分かりやすく紹介ます。

シラスにアニサキス?

アニサキス
写真提供:厚生労働省

結論から言えば答えは「YES」です。ただしシラスを食べてアニサキスに感染し、食中毒になる可能性は極めて低いと思って大丈夫です。というのも人に危害を加えるアニサキスというのは幼虫の状態で魚の内臓や筋肉の中に潜んでいます。

そのアニサキスの幼虫は最初、体長数センチ程度のオキアミと呼ばれるプランクトンに寄生※1していてそれらを餌とする小型の魚が食べるという食物連鎖を経て徐々に感染域を拡大し成長していくのです。

※1オキアミなどのプランクトンに寄生しているアニサキスの幼虫を『第2期幼虫』といいタラやサバなどの魚に寄生している幼虫は『第3期幼虫』である。人に悪さを行うのは『第3期幼虫』の形態のときになる。

シラスも他の魚同様にプランクトンを餌とするためアニサキスの幼虫に感染することがあります。ただしシラスの様な小さな子魚ではアニサキスの幼虫は大きく成長できないため小さいままで過ごすことになります。この状態のアニサキスは弱く、そのほとんどが水揚げされた時点で死んでしまいます。たとえ人の体内に入ったとしても生きていくことはできずに胃酸ですぐに死滅してしまうのです。

このように生のシラスを食べてもアニサキスに感染する可能性は0ではありませんが、食中毒症状を引き起こすことは非常に稀であることから過剰に心配する必要はありません。

別記事でアニサキスについて詳しく解説しています<アニサキス>

大複殖門条虫に要注意?

写真提供:東京都福祉保健局 大複殖門条虫(成虫)

シラスにはアニサキスとは別の寄生虫が潜んでいることがあります。専門家からすればむしろこちらの方がアニサキスよりも人に感染する確率は高いので注意するべきと言わざるを得ません。

それは大複殖門条虫と呼ばれる寄生虫で、いわゆるサナダムシの一種です。元々クジラが固有の宿主だけあり体長が3~6m(10mほどにもある場合もあるとのこと)もある超大型の寄生虫なのです。

ただ注意とはいってもアニサキスと違い短期間で強烈な腹痛を引き起こす、痛みを伴う寄生虫というわけではありません(病状の点だけに関して言えばヒトに優しい寄生虫です)

この寄生虫に感染した場合多少の腹痛や下痢などが表れることがありますが重症化することは極めて稀で、基本的に無症状・無自覚の場合も多いのです。大抵の場合排便とともに虫の一部がお尻から出て初めて気が付き、医療機関にてお尻から出てきた細長い糸のようなモノが寄生虫であると知りビックリするのが一般的なパターンです。

シラスに関する注意事項

ちりめんジャコにもアニサキス?

ちりめんジャコというのはスーパーなどでパック詰めにされて売られているカラっカラに干されたシラスの商品名のことですね。これについては基本的にアニサキスの心配はありません。※2

ちりめんジャコの場合、沸騰したお湯で加熱処理をしているためアニサキスに限らず他の寄生虫や雑菌など有害となる生物は全て死滅しています。そのため、ちりめんジャコを食べてアニサキス症(食中毒)になることはまずありませんので、安心して食べていいでしょう。

※2過去チリメンじゃこによるヒトへのアニサキス感染が起きたという記録は見当たりません。

フグの稚魚は危険?

写真提供:愛知県

市販のしらす干しの中にフグの幼魚や稚魚が混入していたとして自主回収をするケースが相次いで起きています。これはフグを販売するには有毒部位の除去が必須であり、それが稚魚であってもそのままで販売することは食品衛生法違反だからです。

ただフグの稚魚に含まれる程度のごく微量の毒であれば食べても健康被害の影響はなく安全であるとされています。しかし実際には個体差もありますし絶対に何も起きないとは言えないため見つけた場合は口にしないほうが良いでしょう。

より詳しく知りたい方はコチラもチェック<見ているだけで楽しめる寄生虫の本おすすめ8選>