梅干し

梅の種には天神様が寝ています

梅は食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござる

さていきなりですが、上記のことわざを聞いたことはありますか?簡単に言い換えると、梅を食べる時に種(正確には仁)までは食べないで下さいねという意味です。
なぜならば梅の種には「人体に対して有害な成分」が含まれているため沢山食べると危険なのです。
昔の人はそのことを知っていたため、ことわざに残して食べないように注意していたという事なんですね。

梅は1500年前に日本に伝来した

日本人は梅が好きです。昔から梅干しをはじめとし、色々な加工食品に姿を変え梅は食べられてきました。
しかしです、梅に含まれている有毒成分の認知は意外にも低いままではないでしょうか?
「これではイカン!」…ということで、今回はイザという事態を考え梅の毒に関する見分を深めていこうと思います。

※この記事を読めば梅の毒に対してなんとなく分かった気になれますが詳しくは専門の梅サイトでしっかりと学習をしていただければと思います。

梅に含まれる毒の成分を知る!

梅の内部図解図のイラスト

初めに知っておきたいこととは

誤解なきように最初に書いておきますが、梅の種に毒があるよ、といっても一個体に含まれている保有量は少なくまたその毒成分は梅干しなどに加工する過程でそのほとんどが失われてしまいます。
したがって市販で売られている梅干しや梅関連の製品は安全ですので安心して食べてください。

ということで梅の毒に関する見識を深めたい方以外は以下の長い文章を読む必要がありません…悪しからず

まずどんな毒ですか?

梅の種に含まれる毒は主にアミグダリンプルナシンという成分で、青酸配糖体と呼ばれています。
ただし青酸配糖体の成分自体はヒトの体には無害です。しかしこの成分が人の体の中に入り微生物などによって分解されると【シアン化水素】という物質が生成されます。このシアン化水素は毒性が強く人体に対して大変危険な成分なのです。

シアン化水素って何ですか?

シアン化水素とはシアン化合物の一種で主に化学薬品や工業製品などで使われている…っと、シアン化~と説明を聞いてもピンと来ないのではないでしょうか?正直あまり興味もないと思います。
身近な例として、家屋の火災時には沢山の黒い煙が吹き出ますね。またビニール系やポリウレタン系の製品を燃やしたときにも刺激臭のする黒い煙がでますよね。
あの黒い煙にもシアン化水素(シアン化合物)は含まれています。
そしてシアン化水素を含む煙などを大量に吸い込んでしまうと、ヒトの体は【シアン中毒】という状態になってしまいます。

シアン中毒とはどんな症状なの?

シアン中毒とはかいつまんで言うと体の細胞の呼吸を邪魔をする作用があるという点です。私たちの体は口や鼻から空気を取り込み体中の臓器に酸素を送って生きています。
しかしシアン中毒症状になってしまうと、体内に必要な酸素が運ばれなくなってしまうのです。多くの酸素を必要とする脳などは特に影響が出やすいとされています。
またこの中毒は症状が出るのが非常に早いという特徴があります。
ものの数秒~数分で現れる場合があり、火災時に黒い煙を吸い込んだ際、意識を失いやすいのはこのようなことも起因しているという事ですね。

中毒症状になると体に何が起きるの

初期症状として、頭痛めまい、吐き気や嘔吐、呼吸促進、頻脈、紅潮などが現れます。
時間が経過し症状が進行すると血圧低下、痙攣、意識障害や昏睡など神経系の症状が表れ、更に悪化すると呼吸困難や心肺停止などによって最悪死亡することもある危険な状態です。
火災などで煙を吸ってしまったらシアン中毒の危険があるのですぐに救急車を呼びましょう。

他にもあるよシアン化合物

シアン化合物にはシアン化水素以外にもシアン化ナトリウムシアン化カリウム(青酸カリ)と呼ばれるものがあります。
青酸カリなどはドラマなどでも良く耳にする薬品名かと思います。毒物として非常に有名ですので名前を聞いただけで危険なんだなという事が分かりますね。
元々これらの成分は化学薬品や工業用品として使われているモノであるため、とりあえず食べる目的ではないものばかりです。

アミグダリン(やプルナシン)は種以外にも含まれている

アミグダリンは何も種(種子)だけに含まれている成分ではありません。梅の果肉にも微量ですが含まれているのです。
特に青梅と呼ばれる完熟する前の梅の果肉に多く含まれており、実が未成熟であるほどその保有量は多い傾向にあります。
梅の木に実ったばかりの種も柔らかい育成時期の梅の実は通常よりもたくさんのアミグダリンやプルナシンといった青酸配糖体を持っているので食べるのには適していません。
梅酒を作るときに青梅を使うと思いますが、例えばあれにも微量ですが有毒成分は含まれているため子供の手の届かない場所に保管しておく必要があります。(間違えて食べてしまうかもしれませんからね)

梅以外の果物にも青酸配糖体は含まれています


青酸配糖体は梅など主にバラ科の果物の未成熟な種子に普通に含まれている成分です。
身近な果物ではウメ以外にもモモやアンズ、ビワ、リンゴ、スモモ、アーモンド、サクランボなど普段スーパーでよく見かける果物ばかりですね。

梅干しの種は300個まで食べても大丈夫といわれていますが…

梅は沢山食べると体に良くない

梅干しは何個まで食べても大丈夫なのか

実際に梅干しや、その種をいくら食べると危ないのかというのは梅の品種加工状態に加え個人の体調・免疫力等多くの要因で変わってくるため一概に決めることはできません。
梅干しの種を3~4個食べたからといって直ちに人体に対して有害かと言われると、それが健康に影響が出ることはまぁ少ないでしょう。
(でなければ筆者はここには存在していません…)
目安として健康な成人で300個ほど、子供であれば100個程度食べると危険であるとされています。
正直な話それだけ食べれば毒でなくても過剰摂取でなにかしら健康に影響が出そうな数量ですが。

とりあえず何度も書きますが、基本市販されている加工された状態の梅はほぼほぼ無害であるという事です。(まぁ当然と言えば当然なのですが)
なんでも食べ過ぎは体に毒であるという事さえ押さえておけばよいと思います。


なぜ梅にはアミグダリンが含まれているの

なぜ毒を持つのでしょう。
発育途中の未熟な梅は果肉だけでなく種も非常に柔らかくなっています。これでは昆虫や鳥などの外敵に簡単に食べれてしまいますね。
梅の果肉や種子に毒が一番多く含まれる時期もちょうどこの発育段階の頃です。そうアミグダリンなどの有毒な成分を作ることによって動物に食べられにくくし自分を守るための自己防衛機能だったんですね。

梅の健康に良い効能

梅は色々な食品に加工されている

梅は健康にいい食べ物

毒のお話ばかりでしたが、だからと言って梅が危険な食品という事を言いたいわけでは決してありません。逆に梅には有機酸やミネラルが豊富に含まれており、疲労回復・老化防止効果など昔から健康に良い食品とされています。

1日1粒医者いらず

梅にはこんなことわざがあるくらいですからね。梅は自他ともに認める優秀な食べ物である証拠なのです。

効能 詳細
疲労回復効果 クエン酸などの有機酸の効果によってエネルギーの代謝を促進させることで、疲れの原因となる乳酸を分解・抑制することで疲れにくい体になる。
食欲増進効果 酸味成分であるクエン酸によって唾液の分泌を促進させ食欲を増進させる効果が見込まれまれます。
便秘の改善効果 消化吸収を促し腸の働きを活性化することで便秘の改善も期待できます。
血液サラサラ効果 梅の果汁を煮詰めて作る際にできるムメフラールという成分が血小板凝集抑制作用を持つことで血栓の予防効果があると考えられています。
胃癌予防効果 梅リグナンの一種であるシリンガレシノールという成分が胃がんの原因であるヘリ子パクターピロリ菌の運動能力を低下させることで胃癌の抑制を促す効果が期待されています。
ダイエット効果 梅に含まれているバニリンと呼ばれる成分が小腸で吸収されると体内の脂肪細胞に刺激を与え、その刺激によって脂肪が燃焼しダイエットの効果が期待されています。
老化防止効果 梅リグナンと呼ばれる成分は植物ポリフェノールの一種で抗酸化作用があるため活性酸素による酸化を抑制する働きがあるとされています。
カルシウムの吸収促進効果 クエン酸をはじめとした有機酸んはカルシウムや鉄などの吸収を助ける働きがあります。
食中毒の防止効果 抗菌作用によって食中毒の原因となるブドウ球菌などの食中毒菌の増殖を抑制する効果があります。

梅の雑学

6月6日は梅の日 ➀

紀州梅の会が平成18年に「梅を贈って健康を祝し、ロマンを語る日」、梅の日として定めています。6月6日は宮中の日記「御湯殿上の日記」に記されていたお話から来ています。
内容を簡単に説明すると、大昔に日照りが続き困っていたところに神様のお告げを受けた当時の天皇が梅を奉納して祈ったところたちまち大雨が降り水不足を解消し他ことで、当時の人たちはその恵みの雨を梅雨(つゆ)と呼んだそうです。

7月30日は梅の日 ➁

7月30日は梅の日です。和歌山県みなべ町の東農園が平成16年(2004年)に定めています。
昔から「梅干しを食べると難が去る」と言われていたことから「なん(7)がさる(30)」といった具合に語呂合わせで決められたようですね。ちなみに和歌山県は梅干しの購入金額・数量が全国1位だそうですよ。

梅干しの種類について

伝統的な梅干しと調味梅干しの違いをご存知ですか?近年スーパーで売られているほとんどは調味梅干しと呼ばれるものです。伝統的な方法で作られた本来の梅干しは塩分濃度が20%以上のモノをいいますが、調味梅干しはその半分ないしそれ以下というのが大半です。
よく梅干しは腐りにくいと言われますが調味梅干しは保存性が低いのでご注意ください。

種類 塩分濃度(目安です) 備考
白干梅干 20%以上 伝統的な製法で作られた梅干し。塩分濃度が非常に高く酸っぱい
しそ漬け梅干し 10%~20% 白干梅干しにしその風味を追加した梅干し。塩分濃度は高め。
昆布梅干し 5%~10% 塩抜きを行い昆布エキスなどで味付けを行った梅干し。ダシが効いているため食べやすい。
カツオ梅干し 5%~10% カツオエキスなどで味付けをした梅干し。ご飯と一緒に食べやすい。
はちみつ梅干し 5%~10% はちみつで甘く仕上げた梅干し。子供でも食べやすくなっている。

天神様について

「梅は食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござる」に出てくる天神様とは天満大自在天神(てんまだいじざいてんじん)ともいい学問・至誠・厄除けの神様として知られています。
また「九州福岡県」には全国に約12000社あるとされる天神様をお祀りする神社の総本宮と称えられている”太宰府天満宮”があります。ちなみに太宰府天満宮には「梅の種の納めどころ」という梅の種を納める専用の場所があります。
ちなみに太宰府天満宮には「梅の種の納めどころ」という梅の種を納める専用の場所があります。

青酸配糖体の保有量について

梅の果肉に含まれるアミグダリンとプルナシンはともに青酸配糖体という成分の一種で成分の保有量は品種や部位によってバラつきがある。
しかし梅の発育初期にはプルナシンが多く含まれ、収穫時期になると逆にアミグダリンが大半を占めるようになります。
また遅咲性品種の梅ほど青酸配糖体の保有量が高いと考えられています。

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