ブリは気温が下がる冬から春先にかけて旬を迎える人気の魚ですが、ブリ糸条虫(しじょうちゅう)というミミズ様の少~し気味の悪い寄生虫が潜んでいることを知っていますか?
今回はそんなブリの寄生虫に関しての危険性や注意事項を解説していこうと思います。

どんな寄生虫?

ブリの筋肉に寄生しているブリ糸条虫 出典:東京都福祉保健局

ブリ糸条虫、正式名称をフィロメトロイデス・セリオレ(Philometroides seriolae)とも呼ばれ、ちょっとおしゃれな名前を持つこの寄生虫はブリの筋肉部に寄生するミミズのような姿をした線虫(寄生虫)の一種です。
大きいもので40~50センチほどにも成長し、とぐろを巻く形で魚の体内に潜んでおり、ブリの解体中に遭遇すると慣れている方でも驚く方が多いと聞きます。

春に多く見られる

ブリ糸条虫は寒い時期には少なく暖かくなってくると寄生率が高くなるという特徴があります。
特に春先、産卵後の雌の鰤に多くみられますが、夏の間には体外へ出ていくため冬の鰤にはあまりお目にかからないという循環になっているようですが、詳しい生活史は分かっていません。

食べても無害

見た目は食欲が無くなる気味の悪い風貌をしていますが、実際はヒトには寄生しないため食べたとしても健康に影響はありません。ただやはり見た目のインパクトが大きいため発見されると結構な頻度でクレームの対象にはなるようですね…。
ただし寄生虫が潜んでいた穴には黄白色の粘液がたまっていることがあるため寿司や刺身で食べる時はその部分を削除してもいいかもしれません。(食べても問題はありませんが見た目がアレなので)

天然物と養殖物の違い

スーパーなどで売られているブリは飼育環境がしっかりと管理された養殖物が多いこともあり最近はあまり見かけなくなりましたが、天然物を捌いているときは結構な頻度でお目にかかることが出来ます。

昔は天然物を証明する証として寄生虫を見せていたお寿司屋さんもあったくらいですから、ブリ糸条虫が出てくるという事は新鮮な証という見方もできます。
ただやはり寄生虫が苦手な方も多いとおもいますので、どうしても見たくない触りたくないという場合は養殖物を選ぶようにすると良いと思います。(とはいっても稀に寄生虫が潜んでいいる場合もありますが…)

アニサキスに注意しよう

アニサキス 出典:東京都福祉保健局ホームページ

ブリに潜む寄生虫は何もブリ糸条虫だけとは限りません。寄生虫の中で最も知名度のあるアニサキスももちろんブリに寄生している事があります。

アニサキスとは

アニサキス

アニサキス 出典:東京都福祉保健局ホームページ

アニサキスは体長が2~3㎝程度の小さなミミズ様の細長い姿をした寄生で回虫と呼ばれる種類です。海の魚の腹膜(ふくまく:腹部の内臓を覆っている薄い膜のこと)やエラ、内臓に幼虫の状態で寄生していて、宿主の魚が死ぬと筋肉に移動することも知られています。
固有宿主(こゆうしゅくしゅ:寄生虫の幼虫が成虫にまで成長できる宿主のこと)はイルカやクジラ、オットセイなどの海棲哺乳類です。

ヒトへはブリを始めイカやサバ、ニシンなど海産魚類を生で食べて感染します。日本人は刺身や寿司など生で魚を食べる習慣があり、世界的にみてもアニサキスの感染者が多い国と言われています。

激しい腹痛に要注意!

アニサキスがヒト体の中に入ると胃や腸の壁に刺入(しにゅう)することで食中毒であるアニサキス症を引き起こします。

◆急性胃アニサキス症:アニサキスが胃に寄生した場合、食後数時間時間で腹部に強烈な痛みや悪心、嘔吐が表れる病気です。

◆急性腸アニサキス症:アニサキスが腸に寄生した場合、食後数十時間から数実後に激しい腹部の痛みに加え腹膜炎症状や腸閉塞などが起きる病気です。

アニサキスによる症状はの多くは胃で起きる胃アニサキス症ですが腸の他胃・腸以外の腸管外アニサキス症という珍しい症状も起きることが知られています。また消化器症状以外では蕁麻疹や呼吸困難などの即時型アレルギー反応がみられる場合もあり注意が必要です。

寄生虫に注意するために

加熱や冷凍処理をする

ブリ糸条虫やアニサキスといった寄生虫は熱に弱いため70℃以上で中心部までしっかりと火を通すことで死滅させることが出来ます。

生で食べる際は一度冷凍すると安全ですが、低温には強いため最低でもマイナス20℃で24時間以上の冷凍処理が必要になります。

寄生虫を取り除く

内臓には寄生虫が潜んでいることが多く時間がたつと筋肉の部分に移動し始めるため魚を丸ごと購入した場合は時間をおかずに直ぐに内臓を取り除くようにしましょう。もちろん内臓を生のまま食べることも非常に危険ですので止めましょう。

刺身や寿司で魚の切り身を使う場合もアニサキスやブリ糸条虫がいないか目視でしっかりと確認することで感染予防につながります。

調味料では寄生虫は殺せない

一般的な調理で使う様な醤油や塩漬け、ワサビや酢などの調味料を使用しても寄生虫には効果はありません。殺菌・殺虫効果があるように感じますが気持ち程度だと覚えておきましょう。 

まとめ

日本では徹底した衛生管理の他冷凍・流通技術の発達、養殖の向上等によって、生魚を安心して食べる環境が整っています。しかしその一方で本来身の回りに当たり前に存在する寄生虫の恐ろしさを忘れがちになっているという弊害も起きています。

今回紹介したアニサキスやブリ糸条虫のように感染しても軽症ですむような寄生虫だと少し注意する程度でいいのですが、中には感染すると命に係わってくる非常に危険なタイプもいます。

どの生き物にどのような寄生虫がいるのか、危険性はあるのかをしっかりと理解し安心で安全な食生活を送りましょう。