寿司に刺身に…日本で最もよく食べられているマグロ、そんな国民的な魚が原因の食中毒が近年全国的に発生しています。今回は非常に身近な食材である『マグロに潜む怖~い寄生虫』を紹介していきます。

食中毒の原因って何?

クドア画像出典:厚生労働省HP

マグロの生食による食中毒原因の一つが『クドアと呼ばれる寄生虫』によるものです。この寄生虫はマグロを始め『ヒラメなどにも広く寄生している』ことで知られており厚生労働省や農林水産省他、各自治体のホームページでも注意喚起の記事を目にすることが出来ます。

クドアの特徴として非常に小さく人の目では見えないという点です。したがってマグロがクドアに寄生されていたとしてもアニサキスのように調理中に見つけて取り除くといった予防方法が出来ないのです。

どんな症状が出るの?

クドアが原因となる食中毒症状は主に『一過性の下痢や嘔吐』です。この症状は食後数時間(2時間~1日以内)という短時間のうちに発症しますが病状自体は軽度で重症化することが少なく、後遺症などの事例もこれまで報告されてはいません。発症後は約24時間以内には回復することがほとんどです。

またクドア自体は人間の体内では成虫になれないため、『人に寄生することはなく』放っておいても自然と体内から排出されてしまいます。

食中毒を防ぐにはどうすればいいの?

クドアは『熱や低温に弱い』ため中心部までしっかりと火を通すか、刺身などで食べる場合は一度冷凍することで死滅させることが出来ます。
したがって、スーパーや回転寿司で売られている生のマグロは一度急速冷凍処理をされているためクドアによる心配はほとんどないと言えるでしょう。

※クドアを死滅させるのは冷凍の場合はマイナス20℃で4時間以上の冷凍、加熱する場合は75℃以上5分以上で中心部までしっかりと加熱する必要がある。

またクアドによる食中毒は気温が上がる8月から増加し9月10月と増え、冬場に減少するという統計が出ています。夏場は食中毒になりやすいため注意したほうがよさそうです。

感染防止の取り組みなど

養殖場での寄生虫感染予防対策の実施などもされています。具体的にはクドアに寄生されていない稚魚の使用、飼育履歴・環境の適正な管理、出荷前の寄生虫の検査などです。
こうした取り組みによってクドアによる食中毒件数は減少傾向にあるとのことです。ただしクドア自体の生活環が全て解明されていない事から確実に防止する方法は現段階では難しいとされています。

その他情報

  1. クドアが寄生する主な魚類:ヒラメ、クロマグロ、カンパチ、タイ、マダイ、トラフグ、エビ等。
  2. クドアが感染した魚から魚、ヒトからヒトへの感染はない。
  3. 東京都健康安全研究センターの研究結果ではクドアが検出されるのはクロマグロまたはその若魚メジマグロが多いとされている。
  4. クドアは魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫であるため他の寄生虫のように魚の内臓を取り除いても意味がない。

<<参考文献 一部>>

  • 感染症事典編集委員会、『感染症事典』、オーム社、2012
  • 厚生労働省、「クドアによる食中毒について」、(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000133250.html)
  • 東京都感染症情報センター、「クドアが原因と考えられる感染症」、(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/kudoa/)
  • 東京福祉保健局、「生鮮魚介類を介するもの クドア・セプテンクタータ」、(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/musi/29.html)
  • 農林水産省、「ヒラメを介したクドアの1種による食中毒Q&A」、(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/kudoa_qa.html)