アカシアの花が咲き出す頃、気温も徐々に上がりだすと本格的に始めたくなるのが川釣り。中でも「渓流の女王」と呼ばれるヤマメは熱を通すと独特の香りがありアユと並んで淡水魚の中では人気のある魚です。
日本では昔から食べられてきた魚ですが天然のヤマメには寄生虫が付いていることがあり生で食べると感染するリスクがあります。
今回は渓流魚であるヤマメに潜む危険な寄生虫を紹介します。
どんな寄生虫がついているの?
ヤマメには顎口虫(がっこうちゅう)と呼ばれる寄生虫がいます。この寄生虫は日本では4種類がヒトに感染して顎口虫症と呼ばれる病気を引き起こすことが知られています。
- 有棘顎口虫(ゆうきょくがっこうちゅう)
- 剛棘顎口虫(ごうきょくがっこうちゅう)
- 日本顎口虫
- ドロレス顎口虫
※ヤマメには主にドロレス顎口虫が寄生しています。
ドロレス顎口虫の生態
顎口虫の一番最初の中間宿主はケンミジンコと呼ばれる淡水の中に生きるプランクトンです。そしてそれらを餌とする淡水魚が第二の中間宿主となり、ヤマメなどはこれに当てはまります。最後に終宿主(しゅうしゅくしゅ:成虫にまで育ち繁殖できる宿主)はイノシシやブタなどの哺乳類などです。
【日本のイノシシには高確率で寄生しているとのこと。】
人へはどうやって感染するの?
主に淡水魚であるヤマメを生や加熱不測の状態で食べると感染することがありますし、イノシシの肉やヘビなどからの感染事例も報告されているとのことです。
※ただドロレス顎口虫の感染者は多いわけではなく、1989年に最初のヒトへの感染が確認され1999年までに29例ほど。
どんな症状が起きるの?
ドロレス顎口虫の幼虫が皮膚下を移動することで起きるミミズ腫れのような症状である皮膚爬行症(ひふはこうしょう)が主症状です。
顎口虫の幼虫にとってヒトは終宿主ではないため、人体の中では成虫にまで育つことができず、幼虫のまま体内を迷走しながら勝手に動き回るという聞いただけでもゾワゾワする行動をします。こうして皮膚近くを彷徨った跡が皮膚病変となり赤くなったり、痒みや痛みを伴ったりするのです。
自然治癒することもある?
ドロレス顎口虫は放っておいても2~3か月で自然治癒することもあるといわれています。
…とはいえ体の中を寄生虫が動き回っているのあまり気分がよくないと思いますし、他の顎口虫の中には脳や眼などあらぬ場所に侵入し障害を引き起こす危険な奴もいるため、怪しいと感じたら早めに治療を受けるのがベストでしょう。
予防するには?
- 天然のヤマメなど淡水魚はしっかりと加熱し中心部まで火を通してから食べるようにしましょう。
※新鮮だから大丈夫という謎情報は通用しません。 - 酢や醤油などの一般的な料理で使う調味料では顎口虫などの寄生虫は死滅しないため勘違いしないように注意してください。
※ワサビや塩などもほぼ(というか全く)効果はありません。 - ヘビの生肉や血液など『ゲテモノ食い』は感染の危険度が非常~に高いので避けるのが無難です。
※寄生虫以外の色々な病気の危険もあります…。 - イノシシの肉を食べるときもしっかりと加熱しましょう。ジビエ肉は牛や豚と違い飼育管理されていないためどんな病原菌や寄生虫を持っているかわからないので生食は本当に危険なのです。
※ちょっとデータは古いですが1950年代の調査ではイノシシの寄生率は高い場所で90%を超えていたということです。 - 海外ではできる限り生魚は食べないようにしましょう。メキシコやタイでは9000人以上顎口虫症に感染しているため、このような流行地では注意が必要です。
※メキシコの料理セビチェ(川魚の酢漬け)による顎口虫症が起きています。